「中小企業倒産防止共済制度」とは?

2019.11.14

税理士さんが勧める節税対策の中でもっともポピュラーなものの一つに倒産防止保険への加入があります。
正式名称は「中小企業倒産防止共済制度」といいますが、内容まで把握せずに加入している会社様も多いです。
今回はこの制度について説明していきます。

中小企業倒産防止共済制度の概要

『中小企業倒産防止共済制度』とは、国が全額を出資している独立行政法人中小企業基盤整備機構(以下、中小機構)が運営している制度のことで、『経営セーフティ共済』とも呼ばれています。
取引先企業が倒産した場合、積み立てた掛金総額の10倍の範囲内(最高8,000万円)で回収困難な売掛債権等の額以内の共済金の『貸付け』が受けられる、中小企業倒産防止共済法に基づいた共済制度です。
基本的には、取引先企業の倒産による連鎖倒産や経営難から中小企業を守ることを目的としており、中小企業の経営の安定化を担っています。

共済制度に加入するための条件

共済への加入資格は1年以上事業を継続している中小企業、または個人事業者に限られます。
1年以上事業を継続していても、事業に係る経理内容が不明であったり、税金の支払いを滞納したりしている場合などは加入できないので注意が必要です。

また、以下のように業種によっても加入条件が変わってきます。
・製造業、建設業、運輸業等……資本金が3億円以下、または常時使用する従業員数が300人以下
・卸売業……資本金が1億円以下、または常時使用する従業員数が100人以下
・サービス業、小売業……資本金が5,000万円以下、または常時使用する従業員数が100人以下

加入することで得られるメリット

中小企業倒産防止共済制度に加入するメリットとしては、以下のようなものがあります。

・毎月の掛け金を幅広く設定できる
中小企業倒産防止共済制度では、毎月の掛け金を5,000円から20万円まで、5,000円刻みで自由に選ぶことができます。
また、状況に応じて増額や減額ができるのもポイントです。

・毎月の掛け金を損金として計上できる
また、これらの掛け金は法人であれば損金として、個人事業主であれば経費として算入することができます。

・共済金の貸付けが受けられる
中小企業倒産防止共済制度は、取引先が倒産してしまった場合に最大限の力を発揮します。
取引先が倒産し、売掛金がこげついた場合に、なかなか大金を貸してくれるところはありません。
しかし、中小企業倒産防止共済制度に加入していれば、回収困難な売掛債権などの額以内の共済金の貸付けが受けられます。
限度額800万円まで積み立てていれば、最高で8,000万円の共済金を借りることができるわけです。
また、共済金の貸付けは無担保、無保証人、無利子で受けることができます。
返済期間にも余裕があり、たとえば貸付額が5,000万円未満であれば、半年から5年後の間と定められています。
ただし、注意点もあります。
まず、取引先の“夜逃げ”や“内整理”などは制度上の『倒産』には該当しないため、共済金の貸付けを受けることはできません。
また、貸付け自体は無利子ですが、借りた額の10%にあたる額が掛け金から控除されてしまいます。
たとえば、500万円を借り入れたとして、その10%にあたる50万円がこれまで積み立てた掛け金から減らされるというわけです。
とはいえ、掛け金を犠牲にさえすれば、その10倍もの金額を借りられるのは大きなメリットともいえるでしょう。

・解約時に掛け金が戻ってくる
さらに、大きなメリットとして、40カ月以上加入している加入者に限り、解約時に掛け金の全額が『解約手当金』として戻ってきます。
40カ月に満たなくても掛け金は戻ってきますが、40カ月以上経っていれば、100%の払い戻しが確約されているというわけです。
ただし、『解約手当金』は所得(益金又は収入)となるため、課税の対象となることに留意しておいてください。

いざという時のセーフティネットに

ここまでさまざまなメリットをご紹介してきましたが、取引先の倒産の際に共済金を借りるのは“最終的な緊急手段”です。
借り入れを受ける際には、借りた額の10%にあたる額が掛け金から控除されてしまうため、せっかくこれまで積み立ててきた掛け金を失うことになります。
中小企業倒産防止共済制度の貸付けを受けるのは、さまざまな手を尽くして、それでもどうにもならなかった場合に限ります。
しかし、そういった最終手段を持っておくことは大きな安心材料になるでしょう。

まとめ

いかがでしょうか。

安定して利益の出ている会社では、年間最大240万円が経費として計上でき、40ヶ月以上がたてば、解約した際に、掛け金全額が戻ってくるので、節税効果と将来のリスクに対する備えとなります。

中小企業倒産防止共済制度に加入する必要があるのかどうか、自社や取引先の経営状況などを鑑みて、検討してみてはいかがでしょうか。

※本記事の記載内容は、2019年11月現在の法令・情報等に基づいています。

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